ばいあすにゅーたうん

誤解を招く日記

ジテン・コウテン

いつの間にかズボンに穴が開いていた。一体いつからだろうか。しかし恥ずかしがる必要はない。ズボンの穴は、私がその存在を認めた時点から開いているのである。穴に気付かなければ、穴が開いていないのと同じである。なあんだ、良かった。と誤魔化す事にも疲れたのでズボンを買うことにした。試着してみると、今のウエストサイズよりワンサイズアップしたズボンがピッタリであった。一体いつの間に脂肪がついたのだろうか。しかし、気に病む必要はない。私がその存在を認めた時点から脂肪が存在しているのである。脂肪に気付かなければ、脂肪がないのと同じである。脂肪は存在しないが、脚は短いので、店員さんに裾上げを頼んだ。「ちょっとジテン仕上げだといつ出来るか確認しますね」ジテン仕上げとは一体何だろうか。私が疑問の表情を浮かべたことに気付いたのか、店員さんは言葉を繋ぐ。「ジテン仕上げだとこんな風に縫い目が見えるんです」なるほど?ジテン仕上げという縫い方なのか?「明日にはできるそうです。どうされますか?ジテン仕上げで良いですか?」時点、次点、辞典…… 辞典の製本で使われていた縫い方なのか? 結局ジテン仕上げの事がわからない上に、他にどんな仕上げ方法があるかもわからない私は「ハイ、ジテン仕上げでお願いします」とか細く答えるのが精一杯だった。ズボンを預けると連絡先の記入を求められた。用紙には「自店仕上げ」と書かれていた。思わず「あ!ジテン仕上げってこのお店で仕上げる事なんですね!」と言ってしまった。ジテン仕上げについて、何もわかっていないままお願いしたことがバレてしまった。「なるほど〜、ここで裾上げする以外に、どこかに頼む方法もあるんですね〜」と知った口をきくものの事態は好転せず。