ばいあすにゅーたうん

誤解を招く日記

券闘士

「今朝は松屋にするか」いつもは、運動もかねて少し離れた立ち食いそば屋で朝食をとるのだが、雨が降っていた事もあり、自宅近くの松屋を選んだ。到着すると、店先に掲げられている新商品のポスターが目に入った。トマトカレーのようだ。もう7、8年前になるだろうか。松屋のトマトカレーが好きで良く食べていたことを思い出した。


「今朝はこれを食うか」住宅街の駅近くにある店舗のためか、朝食時間帯の客の入りはまばらである。券売機に対峙し、マイカリー食堂のボタンを押す。松屋は以前からカレーを出していたが、マイカリー食堂という別ブランド?で、多彩なカレーメニューを展開している。所謂ゴーストレストランというやつである。*1
朝食時間帯なので、最初のページはモーニングメニューである。この中に、目的のトマトカレーは無いので、違うページへ遷移する。しかし目的のトマトカレーが見当たらない。一体どこにあるのか。一旦松屋メニューへ遷移し、松屋のカレーメニューページへ遷移する。ここにも無い。トマトカレーは何処。ここで賢い俺はピンと閃く。ははあ、まだこのメニューは販売開始されていないのだな?以前も店頭のポスターを見て、それを注文しようと店に入ったものの、まだ販売開始前だった事を思い出した。店を出て、店頭に掲げられたポスターを確認。●月●日スタート!との表示は見当たらない。という事は既に販売中……?再び店内に戻り、券売機と対峙。マイカリー食堂のメニューを見た時、見落としがあったのかもしれない。もう一度じっくりとメニューを確認する。


「無い……」トマトカレーは無かった。軽くパニックになっている。ただ、幸いな事に後ろに人が並んでいない。人が並んでいたら俺は店を飛び出し、小雨が降る中「助けてください!!」と叫んでいた事だろう。店員に教えを請えばよい?いいや、それは悪手だ。朝の気怠い時間帯にモーニングメニュー以外を頼もうとする客に、親切にする人間など存在するわけがない。そこに無いなら無いですね。おとなしくモーニングメニューを頼んでください。頼まないなら帰ってください。こちらは忙しいのです。こう返されるに決まっている。俺ならそうする。店内のスピーカーからは「みんなの食卓でありたい、ま・つ・や」のフレーズが呪いのように繰り返されている。最初の入店から少なくとも3分*2は経過しているであろう。ファストフード店に入っておきながら、未だ食卓につけていない。もうだめだ。俺はもうだめなのだ。俺は松屋に、松屋のハイテクノロジー券売機に敗北したのだ。


「トマトカレーは諦めて松屋のモーニングメニューにするか……」力尽きた俺は最後の気力を振り絞り、松屋メニューを選択。松屋のモーニングメニューが表示される。ボタンに手を伸ばそうとした俺の視界に、期間限定メニューのタブが飛び込んできた。あれ?そういえばここは確認してなかったな。期間限定メニューを表示させるとあった。トマトカレーがあった。ここだったのかああああああああ!心の中で雄たけびを上げ、トマトカレーを選択。何事もなかったかのように発券された。安堵の表情で席に向かう俺に店員が声をかける。「お水はセルフサービスになっております。給茶機をご利用くださーい」券売機の辺りでうろうろもたもたしていた俺は「松屋に初めて来たおじさん」と判定されたのであろう。券売機に負けた。社会に負けた。初心者が初期装備で迂闊にコロッセオに飛び込んでみた動画でおなじみの底辺松TuberおじさんことMUKAKINは、ぼこぼこに低評価ボタンを押されて、殺し合いに負けたのだった。お情けで食べさせて貰ったトマトカレーは、暖かくて美味しかった。わーい、良かったね。

*1:違いますね

*2:体感で15分