ばいあすにゅーたうん

俺は屁をこくシステムだ

良い気餅/ぼくはあめがきらいだ

東京タワーとスカイツリーをいっぺんに眺められるオフィスに越してきたのは、夏の気配が過ぎ去ろうとしていた十月の事だった。

全面ガラス張りで大変眺めが良い。いや良すぎる位で、高所恐怖症の自分としては恐怖を覚えていた。

残念なのは、その良い景色を眺めながら一服できない事だった。いちいち一階の屋外にある喫煙所まで出向かなければならない。

 

ある日の事だった。デスクで変わり映えのしない昼食を終え、一服しようと喫煙所へ赴くことにした。

いつも人気のない、その眺めの良いエレベータホールには人が数人たむろっていた。皆、外を眺めている。

一瞬、なんだろうか?と思ったが、まあ眺めが良いからなと納得しエレベータを呼びつけた。

 

一階に到着し、ドアが開くとすぐ目の前を人が横切った。

タイミングがあまりにもピッタリすぎて少しぎょっとしたが、まあエレベータホールでもあるし人がいるのは当然だ。

その人が視界から消え、次に視界に飛び込んできたのはつきたての餅であった。

これはあまりこういったところに落ちている物ではないように思う。

暫く思考が停止してしまい、僕はその餅から目が離せなくなってしまった。

 

喫煙所から餅が拾われる様子を眺める。やはり、ビル管理という立場からしても餅がこんな場所に落ちていてはまずいという結論に至ったのだろう。

餅を回収する作業が始められていた。

一方で僕は、なぜあそこに餅が落ちていたのだろうと考えていた。つきたての餅はせいぜい丸められて、お皿の上に盛られた状態であるのが正しいだろう。

何故だろうか。本当にわからなかった。

臼と杵を用いてペタペタとつかれるのが普通だ。最近であれば餅つき機であろうか……

などと考えているうちにタバコはすべて灰になった。

 

それ以来僕は、今はもうそこに無い餅について頻繁に考える様になってしまった。

しかし、餅の話を他人にしたところで正月でもないのにと笑われるのがオチだ。なので黙っている。

 

ただ、最近あの餅は一気に捏ね上げられるために高い所から落とされたのではないだろうかと考える様になった。

毎年毎年、ぺちぺちと捏ねられるのが我慢ならず、一気に叩きつけて、杵で百回つく分の作業を一回で済ませてしまおうと思ったのではなかろうか。

その結果、あんな所につきたての餅が落ちていた。

ずいぶんずぼらな人がいたものである。

そう思う反面、なるほどその方がさっさと正月を迎える事ができるのかもしれないと、少し思うようになった。

 

しかし、そのような過程でできあがった餅は美味いのだろうか。

そこだけはどれだけ頭を捏ねてもわからない。

餅は食ってしまえばなくなってしまうから。

 

 

 

暗い話なので、もう少しつまらない話を書く。

 

 

 

大人になればピーマンが食べられるようになるだろうなという曖昧な根拠に基づく予想は曖昧に実現した。

チンジャオロースのような炒め物であれば美味しいと感じるようになったし、サラダに乗っている程度であれば横にそっと除けて食べられるようになった。

(結局食べてない)

ただ、この十数年でピーマン界も斜め上な方向で進化を遂げている。

それが赤と黄色の憎いやつパプリカである。

昔は赤ピーマン・黄色ピーマンなどと呼ばれ、相当におしゃれな食事でないと出会うことのなかった奴らであるが、今やファストフード店のサラダなどにも顔を出すようになっている。

あれを食わされる子供達は心底かわいそうである。

大人達は、緑のピーマンよりも肉厚でジューシーでフルーツみたいだよ☆などとだまくらかして子供に食べさせようとする。

しかし、嫌いな側からすれば臭汁が増えただけである。うーん、ジュー死ー!

 

あとクリームコロッケも嫌い。

奴も弁当などにこっそりと身を潜めている。

世間の奴らは「コロッケかと思ったらクリームコロッケやー宝石箱やー」などと涙を流しながら食っているようだが、こちらとしては逆に

 

「あ、コロッケだー!」⇒ぐにゃり⇒「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛」

 

と裏切られた気分になってしまう。あの裏切り感というのは良くない。

愛弟子に道場の看板を持って行かれた時と同じような気分になる。

 

さらに、飴も嫌いである。

正確に言うと疲れるので嫌いと言った方が正しいかもしれない。

一粒の飴をなめ終わるまで、30分以上かかることがざらにあるからだ。

 

この日記を書いている朝の話だが、そろそろ降りる駅も近づく頃に、ふと今日は肉まんが食べたいなと思った。

じゃあ、いつものコンビニに寄って肉まんを買って出社しよう…とまで思考が及んだ瞬間、口の中の異変に気が付いた。

朝、出がけに放り込んだのど飴(ヴィックス)が、そろそろ電車を降りるぞという段階になっても口内を占拠していたのだ。

 

なんと恐ろしい事だろうか。時計に目をやると家を出てから1時間経過していた。

その間僕は何をしていただろうか。

鼻くそをほじりながら列に並び、鼻くそをほじりながら電車に揺られ、鼻くそをほじりながら電車を乗り換えていただけだ。

恐怖。

 

 

 

おわりです